29年9月号
( 2017年09月17日 更新)
          俳句三昧
久保田万太郎は、俳句を「つぶやき」だと言った。わが師・品川良夜は「瞬間を右脳で感取すること」と言った。大先輩の神戸玉石は別に何も言わなかったが、「梨一口齧り香車を打ちおろす」と、すごい句を残してくれた。「俳句とは何か」などと、大それたことは言えないが、嘱目の風景を得ながら、己の心の中を写生し、言葉を紡ぎだすのは快いことだ。多くの先達に学びながら、多くの仲間と、その「俳句する瞬間」を共有していきたい。

佐藤游歩近詠
  兼題 「良夜」  
準急の停まらぬ駅の良夜かな  
小人に(まばゆ)いほどの良夜かな
  当季雑詠   
良宵(りょうしょう)や各駅停車で帰りけり
誘われて異次元近く長夜かな

今月の同人句 (游歩撰)
  兼題 「良夜」  
どの山もあさきねむりの良夜かな 関山聡雪
味はふは(ふか)し金時良夜かな 松永風子
りょうやかな師が師を語る道をゆく 石原稲女
光射す仏間の障子良夜かな 飯田 明
人の影踏みつつ帰路の良夜かな 早猛百子
ホロ酔いの問わず語らず良夜かな 鶴田隺夕
  当季雑詠  
たのしさを五つに割りし梨ひとつ 関山聡雪
足先が真先(まさき)(さと)る秋気配 松永風子
無花果(いちじく)や黒塀の外落ちにけり 鶴田隺夕
秋の蝶庭をいろどり風さそう 早猛百子
秋の雨この日も濡れて手紙染み 飯田 明
コスモスや写真、私、女学生 石原稲女