29年11月号
( 2017年11月21日 更新)
          俳句三昧
久保田万太郎は、俳句を「つぶやき」だと言った。わが師・品川良夜は「瞬間を右脳で感取すること」と言った。大先輩の神戸玉石は別に何も言わなかったが、「梨一口齧り香車を打ちおろす」と、すごい句を残してくれた。「俳句とは何か」などと、大それたことは言えないが、嘱目の風景を得ながら、己の心の中を写生し、言葉を紡ぎだすのは快いことだ。多くの先達に学びながら、多くの仲間と、その「俳句する瞬間」を共有していきたい。

佐藤游歩近詠
  兼題 「酉の市」  
頼み事一つ抱えて一の酉  
酉の市小さき願ひを小社(こやしろ)
  当季雑詠   
秋の夜はもの思ふには長からず
生き生きて歳の数だけ秋があり
秋深し江戸から続く路地の奥

今月の同人句 (游歩撰)
  兼題 「酉の市」  
酉の市バスの中にもおかめあり 早猛百子
五代目の茶髪に法被酉の市 中澤惠子
欲張りな熊手行く先銀座線 松永風子
熊手売る娘のうなじ)一の酉 小池紀代
二の酉やいよよまさりし空っ風 石原稲女
小鉤(こはぜ)留め白足袋躍る一の酉 鶴田隺夕
呼び声と手締めのにぎわい酉の市 関山聡雪
熊手買ひ幸福の数を考へる 飯田 明
  当季雑詠  
思い出を少しずつ捨て冬支度 早猛百子
立冬のかたき道掃く音したり 飯田 明
猫道を塞ぐ(こがらし)吹き溜まり 松永風子
銀杏のシュールシュールと気を放ち 鶴田隺夕
枯弦(かれつる)の絡みのままに烏瓜 松永風子
石蕗(つわ)の花()ろき動きの老庭師 中澤惠子
黄落の林を抜けて逢ひにけり 小池紀代
七・五・三娘の筥迫(はこせこ)ひこ孫に 早猛百子
声弾む山晴るる日の四十雀 関山聡雪
新月の有明空に浮かび消へ 石原稲女