佐藤遊歩句集 2009年
【春】
時々は空腹もよし春霞
白富士は東横線の一両目
朧夜や曖昧だけが人生だ
一生はおぼろげなもの本を閉ず
荒東風は気の入れ替えや大欠伸
春うらら何年分も眠れそう
この地球(ほし)を枕に昼寝春うらら
春愁は心の傷か前世(まえのよ)
覗かれて春藻に隠るメダカかな
餅二つ春には春の人生論
春寒や時間は戻ることもあり
未来から時間駆け寄り早桜
早咲きの花散り始めて友見舞ふ
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【夏】
何ごとぞたかがそら豆茹で上がる
その角に太宰の背中夏三鷹
長雨に無聊をかこつ無粋かな
薫風にあるだけの時間(とき)預けたし
梅雨に入りポツリと大事語るかな
世のことは真ん中がよし瓜を切る
この路地も向うの路地も花の梅雨
何事も真ん中目線西瓜割る
紫陽花に雨滴りて水化粧
夕立や遮るものは我が手のみ
日中(ひんなか)の未練きっぱり夕立(ゆだち)かな
ずぶ濡れにふとなりたくて夕立(ゆだち)待つ
夕立や君らは滝のごときなり
夕立や最初の一滴ぽつりかな
寺社塀のこれも功徳か片陰り
炎天下靴磨く(ひと)無口なり
炎昼や靴磨く(ひと)物 言わず
夕立や人は時々ずぶ濡れに
夕立や男は時にずぶ濡れて
手にぽつり一滴落ちて夕立(ゆだち)かな
遠花火間を置いて窓響くかな
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【秋】
ひとくさり動物愛護秋刀魚焼く
路地裏で秋刀魚焼く人嫗(ひとおうな)かな
菊一本すっくと立ちて寄せ付けず
あるだけの光り引き寄せ菊花咲く
徒然に机上に花の愁思かな
草千里逃げ方上手き赤とんぼ
徐に栗剥き語る大事かな
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【冬】
鍋囲む等距離がよし誰とでも
雑草といふ草は無く野にキク科
鍋料理一箸ごとに一語あり
冬の蝶花に縋りて動かざる
鱈の身もわが身の業も鍋の中
足早に襟立てて往く三の酉
一年の我に飽きたり十二月
十二月残る暦の堂々と
千切られて暦一枚十二月
都会には北風に舞ふ(つち)もなく
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